小長谷 達郎

 

化石燃料に代わる有力なエネルギー源である太陽電池は、近年の技術革新によって着実に進化している。これまで利用できなかった波長の光も電気に変換できるようになりつつあるのだ。

 

エネルギーの変換効率は火力発電で約40%、原子力発電で約30%なのに対し、市販の太陽電池では20%程度だ。太陽エネルギーの8 割が無駄になっているともいえ、変換効率の低さが太陽電池の弱点になってきた。実は、従来の太陽電池は可視光しか電力に変換できない。太陽光は6%の紫外光と50%の可視光、44%の赤外光の集まったものなので、そもそも半分の光しか利用していないのだ。

 

これに対し、日東電工株式会社は紫外光を可視光に変換できる封止シートを実用化した。本来の封止シートは太陽電池の半導体を保護するための部品だ。これに光の波長を変える機能をもたせた結果、太陽電池の変換効率は従来よりも0.3%ほど高まったという。北海道大学でも「カメレオン発光体」を応用した太陽電池が開発中だ。「カメレオン発光体」はレアメタルの1種であるユーロピウムとテルビウムの組み合わさったもので、紫外光があたると低温で緑色、高温で赤色に発光する。つまり、紫外光を可視光に変換するのだ。「カメレオン発光体」を含んだフィルムを従来の太陽電池に貼ると、変換効率は2%も高まるという。

 

すでに普及しているシリコン型太陽電池は、長く研究されてきたため、近年は0.2%程度の効率の改善も難しくなっている。今回紹介した新素材は、それ以上の効率の改善を達成しているだけでなく、従来型の太陽電池に適用しやすいため、比較的早く普及するかもしれない。太陽電池が存在感を増すことを期待したい。